原水爆禁止日本国民会議が『エネルギー基本計画案』に対する抗議声明を発出
掲載日:2013.12.16
12月13日、経済産業省の諮問機関である「総合資源エネルギー調査会」は、新しい「エネルギー基本計画案」を了承しました。この計画案は、民主党政権の「革新的エネルギー・環境戦略」を全面的に否定し、原発を「基盤となるベース電源」と位置づけ将来にわたってそのきぼを確保しようとするものです。福島事故やこの間の市民社会の取り組みを無視し、従来の政治家・官僚・電力事業者・原発メーカーからなる『原子力村」の利益を、市民生活の安全に優先させる暴挙です。
目先の私的な利益に拘泥し、将来展望のないエネルギー政策を、市民社会は受け入れられません。先の見通しが立たない廃棄物問題、巨額な費用を注入し続けながら破綻した燃料サイクル計画、膨大な費用をかける意味のない安全対策、国民に負担を押し付ける廃炉費用、問題ばかりの原発を企業や一部の利益のために続けることは許してはいけません。原水爆禁止日本国民会議は14日に抗議声明を発出しましたのでお知らせします。
以下、原水爆禁止日本国民会議抗議声明
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2013年12月14日
「エネルギー基本計画案」に対する抗議声明
原水爆禁止日本国民会議
議 長 川野 浩一
経済産業省の諮問機関である総合資源エネルギー調査会は、12月13日、国の中・長期的なエネルギー政策となる「エネルギー基本計画案(以下基本計画案)」を了承し、原発を「エネルギー需要の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と位置づけた。パブリックコメントと討論型世論調査を行い、「脱原発」を求める多くの市民の意見を前に「2030年代に原発ゼロ」とした、民主党前政権の「革新的エネルギー・環境戦略」を全否定した。原発推進派で委員を固め、重大な懸念を少数意見として排除し、市民社会の「脱原発」の声にも一切耳を貸さない姿勢を、原水禁は決して許さない。
基本計画案は、原発への依存率を「可能な限り低減させる」とする一方で、「必要とされる規模を確保する」としている。川瀬一治敦賀市長は、新増設や建て替えの明記がないことを「残念」としたが、生駒昌夫関西電力副社長は、「規模を確保すると言うことは、事実上新増設を認めている」との解釈を明らかにし、「われわれの意見を反映している」と語った。今、電力会社や自治体がやるべきことは市民の安全のために原発を止めることだ。自身の利益にしか言及しない姿勢は許されない。
放射性廃棄物処分問題では「将来世代に先送りせず、現世代の責任で対策を進める」としたが具体策はない。すでに国内には1万7千トンもの使用済み核燃料がある。このまま原発を動かすなら、早い時期に核燃料プールは満杯となるが、何万年という管理が必要な放射性廃棄物を安全に処分する場所は、地震国日本には見あたらない。どう処分しようが、結局は将来世代の負担になる。
核燃料サイクル計画については「着実に推進する」とし、杜撰な保安体制や事故の続発で停止している高速増殖炉「もんじゅ」も、研究終了との民主党政権の方針を覆し、「実施体制を再整備する」とした。高速増殖炉研究の世界の情勢やこれまでの経緯を考えるなら、この判断も理解できないものである。本格稼働の延期を繰り返してきた六カ所再処理工場も含めて、使う当てのないプルトニウムを作り出す計画は、「核不拡散」の観点からも許されない。核燃料サイクル計画にいったいどれほどの巨額な費用をかけてきたのか。毎日5500万円、年間200億円とも言われる「もんじゅ」の維持費、福島原発事故の被災者の置かれる現状を考えるなら、こんな答えは出せるはずがない。
茂木敏充経産大臣は、民主党政策を批判し「原発ゼロは現実性のない戦略」というが、核燃料サイクル計画の破綻や放射性廃棄物処分問題、地震大国日本を考えるならば、原発推進を基本にしたエネルギー政策に現実性はない。一部の企業や人間の利益のみを優先し、現実的問題を将来に先送りにして、市民社会の声を一顧だにしない姿勢からは、日本の将来への展望は開けない。「原発依存の低減」と言いながら原発推進をもくろむ姑息な政治に、日本の将来を任すことはできない。福島原発事故に学ぶなら、「脱原発」は当然の帰結だ。政治は、将来の日本社会をどう考えるかの大局に立って「脱原発」を判断すべき時を迎えている。誰もそこから逃れることはできない。
原水禁は、原発を推進しようとする政府に強く抗議するとともに、「一人ひとりの命に寄り添う」ことを基本に、脱原発社会の実現に向けて市民社会と連帯し、いっそうのとりくみをすすめることを確認する。