福島の苦しみを一緒に背負わなければ脱原発運動ではない=『全道100万人署名』をがんばろう!さようなら原発北海道集会」

掲載日:2014.01.21

1月18日、札幌市・かでる2.7で「『全道100万人署名』をがんばろう!さようなら原発北海道集会」が開かれ、550人が参加した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに、さようなら原発1000万人アクション北海道呼びかけ人を代表して3人があいさつした。

 

朝日新聞に掲載されてた「いらないしょ泊原発」の記事を紹介しあいさつする小野有五・北海道大学名誉教授

小野有五・北海道大学名誉教授は「北電は泊原発3号機の稼働申請をしているが、活断層が100キロある。北電は活断層の距離を短く算定して原発を稼働しようとしている。南西沖地震のときは活断層が140キロ連動して動き、奥尻で巨大津波が発生して230人が犠牲になった。あと少し震源地がずれていれば、21年前に泊原発で事故が起こっていた。私たちは生かされている。奥尻の方々の犠牲は私たちの代わり。生き残ったからには危険なモノを廃炉しなければならない。原発は不良債権。原発のコストはいかにも安いと報道しているが嘘だと分かってきている。それをみんなに伝えよう。みんなの力で一日も早く廃炉にしよう。」と述べあいさつした。

 

 

 

 

麻田信二・北海道生活協同組合連合会会長理事

麻田信二・北海道生活協同組合連合会会長理事は「東京都知事に細川さんが立候補した。脱原発だけが争点の選挙と言われているが、脱原発以外にも課題はある。強い地域づくり、高齢者の問題など、安心する暮らしをどうつくるか、どんな人が知事をやっても同じく解決しないとならない。来年は知事選・市長選などがある。脱原発は地方選挙でも最大の争点になるべき。北海道は自然エネルギーの宝庫。食と観光が北海道の財産。地域の経済発展の基盤。それに対して泊原発は邪魔者。再稼働を絶対に許してはいけない。人間は自然の一部。太陽ある限り自然エネルギーをつくれる。そうしないと人類は滅びる。資源に恵まれて食料に恵まれている北海道から原発をなくそう」と述べた。

 

 

 

 

 

西尾正道・北海道がんセンター名誉院長

西尾正道・北海道がんセンター名誉院長は「日本には被爆限度の法律がない。規定はあるが原発の敷地内は1・2時間に抑えなさいとしかない。今回の原発事故に関する健康管理はこれ以上やらないと明確になった。今後、福島県以外はやらない。厚労省ではなく環境省に丸投げされている。例えば札幌で被爆検査をやった場合、診療報酬をどうするか決められない。10年~20年後に今回の健康障害出た場合の対応策が決まっていない。深刻な問題。放射線による健康障害は遅れて出てくるもの。甲状腺検査はやっているが20~40年かもしれない。日本にストックされている廃棄物は多量にある。これ以上稼働させて廃棄物をストップさせるべき。政治や宗教に関係なく、子孫が健康に住める社会つくるために原発をこれ以上稼働させてはいけない。一人の人間として根本的に考えよう。」と述べた。

 

 

 

続いて、「原発は火力より高い」と題して、金子勝・慶應義塾大学教授が講演した。

独特の切り口で講演する、金子勝・慶應義塾大学教授

金子教授は「過去に水俣病やイタイイタイ病などの公害問題あった。その時は、加害者側が責任を持って対応したが、福島事故の場合はそれが逆転している。被害者が自己管理で問題あれば訴訟しろとなっている」と述べた。また、「原発を動かす理由は、電力会社が原発を稼働しないとつぶれるから。いまの現状を見ると東電を救うために状況は泥沼化している。90年代に多額の不良債権を隠してごまかした結果、北海道では拓銀が破綻した。原発問題はそれと同じ状況。東電は拓銀が破綻しても何もしなかった。強大なリスクを背負った場合、すべてのお金をつぎこまないと解決しない。中途半端にやると止まらなくなる」と述べた。さらに、「東電を救うためにはお金を投資するのに、原発事故処理の予算を削っている。日本は2年後には最も恥ずかしい国になる。福島での放射能汚染はひどい。放射線量もどんどん上がっている。除染するために溶接型タンクを使用しないのはお金がかからないから。仮設タンクは5年しか持たない。作業もできない。オリンピックにむけて作業する人がいなくなり、収集がつかなくなる」と述べた。

現在の除染の状況について「日本は長い間、環境問題に取り組んできて、先端的な環境技術を集積している。未だに水俣湾の除染を行うなどしている。環境問題の基本は放射性物質を濃縮して圧縮するのが技術。そういうことはできる。理屈はすごく簡単なこと。セシウムは600度以上で気化するため冷却すれば100分の1まで濃縮できるが、それをやると5兆円もの費用がかかる。だから半分の2.5兆円にしたくてグレコンパック方式を選んだ。それが、1万数千箇所で野積みになっている。グレコンパックは2000万トン。東京ドーム300個分を福島に野積みにしている。誰が引き受けるか。法律に30年後には他県に移すというが誰も生きていない。誰が引き受けるか。最終処分場という名前での核関連施設はオンカロだけしかない。ほかはどこにもない。福島は放射能汚染のシンボルになり永久に汚染されたままになる」と述べた。

国と東電の対応について「官僚も東電経営者も自分たちが4~5年逃げ切れればいいと思っている。子どもの将来のことなど考えていない。自分がいまの地位にいるうちに乗り越えられればいいと思っている。20年後30年後のことなど誰も考えていない」と批判した。

福島の復興にむけて「反原発の人たちは、チェルノブイリを見て除染は無理だと言うが、人ごとのような考え。福島の人200万人を、どこに移住させ、どう生計を立て生活していくのか考えるべき。福島には移住できないというギリギリの人がたくさんいる。私たちは福島の人たちに寄り添わないとならない。がんばっている人はたくさんいる。しかし、今後起きるリスクを黙ってみているだけ。福島の被害をできる限り最小限にしないとならない。それが求められている。東電を救うために5兆円出して、福島の除染費を半分にする。こういうことを繰り返していればどうなるか。いま起きていることを原発が嫌だとかで片付けてほしくない。福島の現実を直視して戦後最大の環境汚染をどうしていくか。そういう反対運動が必要だ」と問題提起したうえで、「放射能管理だけが自己責任とはありえない。放射能汚染の問題を自己責任で被害者に負わせるようなことをしてはいけない。東電にお金を投資し除染費用を減額することに批判のまなざしで見ていかないと、私たちがなぜ原発反対しているのか分からなくなる。いま福島の苦しみを一緒に背負わないと脱原発運動ではない」と強調した。

最後に、脱原発について「エネルギー転換がないかぎり脱原発は実現しない。石炭から石油への転換、交通機関の転換など、ライフスタイルが変わっていったように、エネルギーも再生エネルギーに変わることでニーズが変わり価値観やライフスタイルも変わってくる。そのことで新しい産業や雇用が生まれる。北海道は自然エネルギーが豊富だから、分散型社会に転換させることが必要。小規模分散型が一番。新しい産業構造へ地域分散することで、新しい社会システムが産業構造転換とともに生まれる。みなさんの運動は人間らしく平和でありたいということかもしれないが、単に原発反対ではなく、日本の先頭に立って日本が遅れないように。成長はしていくことが必要。雇用がなければ地域が栄えない。環境・安全という理念を運動の中心に加えれば分散型社会に変わる。社会的意志決定を地域に分散していくことが必要。そうなると北海道は、最も力を発揮する地域は疑いのない事実だ」と述べた。

金子教授の講演を聞く参加者。550人の市民らが集まった。