大阪高裁の高浜原発運転差し止め仮処分取り消しの決定に抗議する(声明)
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2016年3月9日に、大津地裁(山本善彦裁判長)が出した関西電力高浜原発3・4号機の運転差し止めの仮処分決定に対して関西電力が運転再開を求めた保全抗告について、3月28日、大阪高裁(山下郁夫裁判長)は、関西電力の訴えを全面的に認める決定を行った。
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「基準値振動700ガル」「耐震補強工事」、解析によって確認したとする「耐震性」「津波は原発の重要施設に影響しない」など、関西電力の主張のほとんどを「相当の根拠に基づいている」として追認している。大津地裁が「福島第一原発事故の原因究明が不十分な中で作られた規制基準」として「基準を満たしただけでは不十分」とした国の定めた新規制基準についても、大阪高裁は「事故原因は一部未解明だが基本的なことは明らかであり、教訓を踏まえた新規制基準は合理的」との判断を下した。原発再稼働へ一点の曇りもないとする、新たな「安全神話」をつくり出そうとしている。原子力規制委員会は、新規制基準は「最低限の条件」であり、田中俊一委員長自ら、新規制基準を満たしても「安全とは言わない」と表明してきた。新規制基準を絶対視するような司法判断を許すことはできない。
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大阪高裁は、様々な問題を抱え一旦過酷事故が起きれば混乱必至の避難計画さえ「いまだ改善の余地がある」としながらも、検討していることを理由に追認している。そして、避難計画を規制対象にしていないことも合理的と言い切っている。市民の「いのち」に対する視点は完全に欠如している。また、大阪高裁は、「新規制基準が不合理だとする立証責任は住民側にある」とした。これまで、国策として実施されてきた原子力政策は、その情報のほとんどを市民に知らせることなく、秘密主義を貫いてきた。未だに福島第一原発事故の原因究明が進まない理由の一つに、その秘密主義が上げられる。秘密裏に原発は運用され、その結果としての事故によって被害を受けるのは市民であり、事故収束や賠償の費用を賄うのも市民である。その市民に、立証責任を求めることこそ不合理ではないのか。 |
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これまで原発の危険性が数多く指摘され、原発の運転や建設を止めようとする多くの訴訟が起こされてきた。そこには、自らの「いのち」を守ろうとする市民社会の思いがある。司法は、原発停止による電力不足など社会的・経済的影響に鑑みて、原発の停止や建設を止める判断を回避してきた。しかし、2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故以降、全国全ての原発が停止しても電力不足は起こらず企業活動への影響もほとんど見られなかった。一方で放射性物質の拡散した地域における経済活動や市民生活、文化とコミュニティーに対する影響は計り知れないものがあった。6年を経て、帰還困難区域ではいまだ避難生活を強いられ、帰還が許されたとされる地域においても、いまだに元の生活に戻ることはできない。その中で「脱原発」の声は市民社会を圧倒する意見として定着しつつある。 |
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原発には、高レベル放射性廃棄物処分やプルトニウムを利用する核燃料サイクル計画など多くの問題が付随している。司法は、原発政策の全体を俯瞰し、日本社会の将来を展望し、そして真摯にフクシマと向き合って、市民の「いのち」を守るところから判断しなくてはならない。
大阪高裁判決は、司法の責任や立場・役割を省みることなく、国の政策や企業の営利活動を全面的に支持する全くの「不当判決」である。原水禁は、この決定を普遍なものとしないように、そして「脱原発社会」を実現するように、全力でとりくんでいくことを確認する。 |
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2017年3月29日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一 |