東日本大震災を風化させてはいけない=「3・11から3年」・復興シンポジュウム

掲載日:2014.03.04

3月1日~2日に、岩手県宮古市・宮古ホテル沢田屋で、いわて地方自治研究センター・自治労岩手県本部主催の、「3・11から3年」・復興シンポジュウムが開かれ、全国から87名が参加した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに、主催者を代表し、小原宜良・いわて地方自治研究センター代表が、「2012年3月3日に、この場所で、復興シンポジュウムを行った。まさに、復興から1年後だった。それぞれの、取り組みが生々しく報告され、みんなで頑張っていこうと誓いあった。震災から3年後の今日、シンポジュウムを開くことが出来た意味は大変大きい。これまでの震災復興にむけた取り組みの状況を検証し、これからの復興のカギを確認しながら皆さんと頑張っていこうと考えている」と述べ、「震災後、まもなく新聞に記載された記事に、『復興の復という意味は、亡くなった人を思うということ。復興の興は、土地の霊を生かす』ということと記載されていた。そのことを、被災者に寄り添い土地利用に生かせていきたい。現地のみなさんの思いを受け止め、現場主義に寄せながら、みんなで頑張りたい。復興の有りようを、今日・明日で確認していただきたい」とあいさつした。

 

 

その後、斎藤健市・自治労岩手県本部執行委員長が「復興に向けて、多くの県本部に協力して頂いたことに、改めて感謝したい。今月、震災後に入学した高校生が卒業するという時間の流れになった。この3年間苦労して学んできた。その生徒が、震災復興後町を支えるようになってほしい」と述べ、「復興は道半ばだが、復興協議は自治労組合員が日夜奮闘している。また、全国の組合の仲間が被災地に入って来ている。そういう形で復興を成し遂げていくことが、労働組合としてそれでいいのかどうか検証をしなければならない」と述べた。「本来は自分たちの手で、復興を行っていくことがいい形だが、人的に足りないことで全国の仲間に要請しているが、協力いただいている多くの自治体も、そんなに人員が多いと現状ではない。労働組合として3年間の復興支援がどうだったのか検証し、政策として語り継いでいくことが必要。震災直後も遠野市が復興支援の拠点として協力いただいたが、本来、内陸の自治体が横の連携を密にし、支援をすれば違う形になったのではないか。震災直後の初めての経験をしっかり検証し、労働組合の立場で一つの政策をどういう形で復興支援をしていけばいいのか考えていかなければならない。という意味でシンポジュウムを開催した。みなさんから、意見をいただきたい」とあいさつした。

次に、来賓として、杣谷尚彦・自治労本部副委員長が「震災で犠牲になった方々に冥福を祈る。被災された方々には敬意を表したい。復興作業に働いている職員に敬意を表する。自治労として対策本部は震災翌日に設置し、4月10日から3カ月に渡り復興支援に取り組んできた。全国の仲間とともに、10道府県・549名が支援活動にあたった。その後、心の相談室を設置し、高ストレス対策に取り組んだ。今後も、組合員のストレス・メンタルヘルス対策の強化が必要。自治体の慢性的人員不足が生じている。人員確保の闘争を取り組んできた。今後も取り組みの強化をしていく」と述べ、「3・14に宮古市で、意見交換会を実施する。政府・県に対する要望や自治体・現場が抱える課題、単組・組合員が抱える課題・不満、単租から県本部・自治労本部に対する要望などをテーマにし行う。意見交換会を踏まえて、関係省庁・国会議員に対する働きかけの強化・メンタルケアに関するセミナーの開催など、単組が主体的に課題を解決する企画を県本部や単組に発信をしていく。セミナー・意見交換会を契機に、災害に強い町づくり、職員の生活・労働条件を守ることにつなげる」とあいさつした。

つぎに、山本正徳・宮古市長が「シンポジュウムを宮古市で開催はうれしく思う。全国からお越しの皆さんには、震災後復旧が進んでいる現地をみていってほしい」と述べ、「宮古市として震災からの復旧を重要課題として取り組んできている。『宮古市は必ずこうします』と強い決意をもとに市民・職員など多くの皆様のご支援・ご協力をいただきながら、復旧・復興にむけて歩んできている。自治労本部・岩手県本部に、避難所の運営・救援物資の仕分け・義援金受付補助など取り組んでいただき、感謝申し上げる。宮古市の計画は、平成25年までが復旧、26年は再生期として、復興に軸足を移し事業を強める。『住まいと暮らしの再建・産業経済の復興・安全な地域づくり』の3点を柱とし震災前の活力の再生、もっとこの地を良くする職員に力を注いでいく。皆様のご支援をお願いする」とあいさつした。

 

 

つづいて、基調講演「3・11から3年を迎えて」と題し、達増卓也・岩手県知事が講演した。

達増知事は「復興は『自治・学び・改革』である。見つけたいものを探す原点に取り組む。愛する家族の未来を見失った。復興のむずかしさは、個別性、多様性、非統一性。これらを持つ事業を発展させていくことが必要。一人ひとりの復興が目的となる。地方自治の目的は一人ひとりを守ることにある」と述べた。

「大震災直後の対応はトップの決断ではよくない。自治の意思決定のパターンは、みんなで一つの事を決める。コンディネーション調整して、それぞれ自分のやることを決める。意見交換・相談なしに決めてやる。このように意思決定するために、情報の収集、分析、判断を学ぶ姿勢が必要だ。自治=自「知」と言っていい。こうなれば復興が進んでいく。復興とは創造的、クリエイティブがなければならない」と主張した。

「県は、10年計画として『暮らし、仕事、学び』の柱を立てている。この3年間他の自治体から職員の派遣が行われているが、どちらも人員的には苦しい実態。政府は、地方自治体の定員として認め、低位に確保をしなければならない。私は、ローカサイザーと呼ばれている。地元を大事にして復旧、復興を行っている」「復興は改革。今出来ない事ができるようになる。岩手県は改革的手法として、「復興実施計画における主な取り組みの進捗状況」を毎月1回更新し、ホームページでも見られるようにし、情報公開という方式を行っている。また、政策評価を「復興計画」を年度ごとに見直す。分権改革・地方権限の確保、アンバリー不足の人的支援など国に求めている」と述べた。

最後に、「経済効果を狙うため、内需拡大型経済政策は「アマノミクス」呼んでいて、地方における独自産業化していて、途上国発展にも繋がっている。瓦礫は3年間で行えた。今後3年間は、基盤復興期間とし高校、病院、公営住宅建設を行う。持家建設は、土地の再建が3年でピークになるのでその後になる。また、仮設住宅も継続となる。若者と女性の活躍支援をすることが、復興のカギとなる。格差・貧困が災害を拡大する。この問題を解決しなければならない。みんなで力を合わせて地元を守り、発展させることが自治であり、改革だ」と訴えた。

第二部は、現場からの報告・パネルディスカッションが開かれた。

コーディネーターは、小原さん。パネリストは、宮古市議会議員・竹花邦彦さん、遠野市職員労働組合書記長・高橋蔵さん、岩手県職員労働組合中央執行委員長・平中清人さん。はじめに自己紹介を行い、その後、各パネリストが報告をした。

はじめに、「被災地の現在の復興状況と課題」について、竹花市議が「復興に向けた『住まいと暮らしの再建、産業・経済の復興、安全な地域づくり』の3つの柱とし9カ年計画で、復興を果たしていくとした。しかし、2011年から3カ年は復旧期として取り組んだが、住まいの再生の取り組みは進んでいない状況となり、6472人が避難生活をしている現状」と述べた。また、産業の復興状況について、「被災事業者の8割が事業所の再開を行っているが、100%の再開はない。雇用については、有効求人倍率が1.20倍前後となっているが、非正規雇用などが多い状況」と報告した。最後に、復興に向けた今後の課題について「住まいの再建、マンパワーの不足の解消、グループ補助金等の支援制度の継続が大事だ」と訴えた。

つづいて、「自治体の後方支援と連携体制を振り返る」について、高橋書記長が「遠野市は、平成19年11月19日に、三陸地域地震災害後方支援拠点施設整備推進協議会を設立し、防災訓練で得た検証結果をもとに、提案書を作成し、国や県の関係機関に、要望・提案活動を行った」と述べた。震災直後、「14分後の午後3時に、災害対策本部が始動し、市民と市職員が一体となり、炊き出し活動を開始した。官民一体の後方支援活動として、物心両面の支援を行った」と述べ、「災害救助法は縦割りの仕組みだが、ヨコの連携を支える責任・権限・財源を踏まえた新しい仕組みの構想が必要」と訴えた。

最後に、「復旧・復興を担う自治体職員の現状と課題」について、平中委員長が「震災の影響と職場環境に由来するメンタル上の課題が、震災により顕在化した職員の健康不安が問題だ。放射能汚染対策は震災ではなく、人災だ。職員対応業務となり、怒りを向けることが出来ず、農家の方々をふくめ大変な状況となった」と述べた。「予算はほぼ倍になっている。建設事業費は増え、生活支援事業も増加する。しかし、予算を執行できる体制にはなく、県の行う事業が復興ニーズに合っているのかが課題だ。組織の現状は、任期付雇用・他県等応援職員がいるので増えているが、正職員は増えていない状況の中、少ない人数で事業を推進している現状で、権限はないが、責任は問われるので、部局横断的機能の強化が必要だ」と述べ、最後に「担当者が倒れてしまうと、事業がストップしてしまう。長期的安定的にしていくために、人的面で財政協力を国に求めていく」と訴えた。

その後、意見交換を行い、杣谷尚彦・自治労本部副委員長が「勉強になった。労働条件の改善、メンタルヘルスの取り組みを強化していく」と述べ、最後に、斎藤健市・自治労岩手県本部執行委員長が「発生時、遠野市の取り組みはすばらしい。大震災を風化してはならない」と述べ、終了した。

3月2日に、被災地の状況視察として、宮古市田老地区を視察し、シンポジュウムが終了した。