北海道に「夕張市再生課題に関する要望書」を提出(3月8日)

掲載日:2021.03.10

道本部夕張市財政再生対策委員会は3月8日(月)、北海道に「夕張市再生課題に関する要望書」を提出した。要望書の提出には、道本部から山木書記長・貞尾自治体政策部長、空知地本から竹中執行委員長・田中副執行委員長、夕張市職労から稲場執行委員長・黒瀧書記長が参加し、北海道は総合政策部の田中地域行政局長・野村市町村課再生支援担当課長が対応した。

冒頭、山木書記長が要望書を手交した後、貞尾自治体政策部長が要望主旨として「2017年の財政再生計画の抜本的見直し以降においても、夕張市の人口減少に歯止めがかからず、市役所内部にも計画後の先行きが見えないなどの閉塞感が生じていたなかで、昨年末、マルハニチロ夕張工場の閉鎖や夕張リゾートの廃業などの事態が発生した。夕張市の雇用・経済はもとより、市の歳入減や更なる人口流出など、残り9年となった財政再生計画への影響が懸念され、道による一層の支援が必要なことから要望書を提出する」と説明した。また、要望事項として、①道による支援体制の強化と人材確保対策として、「夕張市職員の人員確保とともに、夕張市職員の人材育成の観点も含めた人的支援を行い、将来的に自治体として自立した行政運営ができるようなサポートをお願いする」、②道による財政等支援と総務省に対する働きかけの強化として、「夕張市の財政再生計画へのマイナス影響を最小限にして、財政再生を確実なものにするための道としての役割を期待する」などと求めた。

これに対して田中地域行政局長は「昨年末の一連の事態は、知事も心配されており、道としても夕張市での様々な影響を危惧している。特に、雇用・経済は喫緊の課題ととらえ、緊急プロジェクトを発動して対策をスタートさせた。今後、具体的な対応が必要となり、簡単ではなく長丁場の取り組みとなるが、夕張市の思いを受け止めながら、道として何ができるかを検討して重点的・継続的に対応していく」との見解を示した。また、夕張市の行政執行体制については、「道としても認識を共有している。夕張市職員の研修等、人材育成についても夕張市と相談しながら道職員を継続派遣していきたい。将来的な計画終了を見据えた執行体制の構築が必要である」とした。さらに、道として「財政面・人的面などから最大限支援できるよう引き続き検討していくとともに、夕張市への対応について総務省へ発言していく」との姿勢を示した。さらに、受け取った要望書については、「要望内容についてしっかり検討し、期日までに文書で回答してまいる」とした。

夕張市職労稲場委員長から、「再生計画の終わりは見えてきたが、市役所内部にも将来の行政運営に対する危機感があり、厚谷市長になってから自立にむけての取り組みが行われているが、再生計画以降、入庁後間もない若年層の人材流出が続いていて年齢構成バランスが偏っている。人材確保と人材育成は喫緊の課題であり、市職労としても第2の財政破綻とともに、人材の破綻への危機感を抱いている。また、工場の閉鎖や夕張リゾートの廃業は市民にとってはかつての炭鉱閉山時に似た不安が広がっているにもかかわらず、行政として対応しきれないもどかしさがある」と状況を訴えた。また、夕張市職労黒瀧書記長は、「夕張リゾート廃業の影響が市民に出始めている。夕張市としても効果的な具体策を模索しているが道の協力をお願いしたい」などと求めた。

これを受けて田中地域行政局長から、「人材の確保は、社会的な問題として道内自治体全体の課題でもある。夕張市の財政再生計画の終了まで9年しかないと考えている。9年後の夕張市のビジョンを見据えながら連携して取り組んでいきたい。夕張市民への効果的な対応策については、道としてもなかなか具体を見いだせずに苦心しているが、地元が少しでも明るくなるような対策を夕張市とともに実施していきたい」との考えを示した。

空知地方本部竹中執行委員長から、「空知管内の旧産炭地の自治体は、抱えている課題は夕張市と同様で、財政不安から賃金の独自削減や人員削減が行われてきた。コロナ対策をさらに実施したくても財政的余力がない。旧産炭地特有の課題として、過去に炭鉱会社から引き継いだ水道などのインフラ施設が老朽化しているが、改修できずに現在に至っており、今後顕在化してくる。夕張市をはじめとする空知管内の自治体が、この難局を乗り越えるために道の支援・助言もいただきたい」などと要請し、道からの理解を得た。

最後に山木書記長が、「本日の要望書提出をつうじて、夕張市の再生課題に対する認識について概ね共有できたと考える。自治労としても組織内の岸参議が総務委員会に所属していることから、総務省からは、市が何をしたいのか、道として何をしたいのか、求められていると聞いている。厚谷夕張市長は1月末に知事に要請しているが、現場で起こっていることを踏まえた対応をお願いしたい。夕張市の財政再生を確実なものとし、再生後においても夕張市が持続可能となるよう助言・指導いただきたい。また、本日共有した課題の多くは、夕張市だけの問題にとどまらないことから、道庁や振興局には、地域を守る取り組みを市町村と一緒に実践してもらいたい」と申し入れて要望書提出にかかるやりとりを終えた。

夕張市財政再生対策委員会は3月3日、岸まきこ参議とウェブで意見交換。岸参議は「目の前の業務に追われ、人材を育成する余裕がない職場状況も大きな課題。特効薬は見つからないが、引き続き一緒に検討していきたい」などと述べ、連携して総務省対策にあたることを確認している。