【道民運動】文献調査応募検討から1年~北海道を核のゴミ捨て場にさせない=北海道平和運動フォーラム声明
掲載日:2021.08.12
高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の第1段階となる文献調査に、寿都町が応募を検討しているという、全道に衝撃が走ったあの日から1年が経過しました。
北海道平和運動フォーラムは、2021年8月12日の北海道新聞に意見広告を出し、広く道民への世論喚起を行うとともに、すべての自治体で「核のゴミ」の受け入れを拒否する議会決議についてもアピールを行っています。
合わせて、声明も発出されていますので、お知らせします。
道本部も引き続き、「北海道を核のごみ捨て場にしない」ため、反核・脱原発のたたかいに全力で取り組みます。
―文献調査応募検討から1年―
北海道を核のゴミ捨て場にさせない北海道平和運動フォーラム声明
高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の第1段階となる文献調査に、寿都町が応募を検討しているという、全道に衝撃が走ったあの日から1年が経過した。神恵内村では商工会が応募検討を求める請願を村議会に提出し、両町村とも地元住民に十分な判断材料も議論時間も与えないまま応募決定に踏み切り、すでに文献調査という名の宣伝工作が始まっている。
文献調査応募の理由として挙げられたのは最大20億円の交付金である。多くの自治体が財政難と過疎化で疲弊しているなか、そこにコロナショックが拍車をかけたなかでの応募検討だった。しかし、空洞化していく産業や過疎問題を核のゴミや交付金で埋めるものであってはならないし、「過疎を取るか、核を取るか」という二者択一の問題でもない。全国的に人口減少社会に突入している以上、核を取ったとしても過疎化が進むのは明白である。それでも各自治体は、地場産業の活性化や保育・教育・公共交通・福祉など、さまざまな努力によって地域を支えようとしてきたはずだ。その努力とは裏腹に、交付金に依存した町づくりや住民の「不安」や「分断」のうえに成り立つ地方自治を進めてはならない。
そうした自治体財政難の弱みにつけこみ、多額の交付税をぶら下げた国のやり方も許されるものではない。交付金に飛びつく自治体の先例は、今後も国のいいなりになる自治体をつくるために、地方格差をあえて解消しないという可能性を秘めている。また、一度、交付金を受け取ってしまえば、国や電力会社から「恩恵」という足かせをはめられることになりかねない。そして、原発の「恩恵」を受けてきた今の世代が「責任」を取るべきなどと、「恩恵」や「責任」を国民に押しつける風潮が喧伝されているが、本来であれば、原発を推進してきた政府や一番の「恩恵」を受けてきた電力会社が「責任」を取るべきであり、その「責任」を「負担」や「被害」とともに地方に押しつけるべきではない。北海道平和運動フォーラムは、どこに住んでいても公平なサービスが受けられる地方財政の確立と、不安定な所得や雇用環境が引き起こした人口減少問題への対策を求める。
北海道は広大の大地を活かした農林業や3つの海に囲まれた豊かな水産資源を有している。そこから生み出される食やグルメ、自然・景観・歴史は、世界に誇れる「北海道ブランド」として確立されている。そのような北海道で高レベル放射性廃棄物最終処分場の研究・調査を実施することは、世界から見ても北海道ブランドのイメージ低下につながりかねない。そして、北海道には「放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れがたい」とする、いわゆる「核抜き条例」が制定されている。同条例には法的拘束力はないものの、条例制定時に込められた道民の思いは尊重すべきであり、放射性廃棄物の持込みにつながる調査に踏み切ってはならない。
一方、使用済み核燃料など放射性廃棄物がすでに存在しているのも事実である。しかし、核廃棄物の処分問題は、どこで処分するかという場所の問題ではなく、安全な処分方法が確立されていないままに処分されてしまうことが問題である。今、やるべきことは「核のゴミをどうするか」ではなく、10万年近くも監視しなければいけない危険な「核のゴミをこれ以上増やさない」という決断を先にすべきである。そこを確約しないまま「一石を投じる」べきではない。そうした観点からも北海道平和運動フォーラムは、原発の新増設も再稼働も認めず、すべての原発の廃炉を求める。
北海道の食や自然を守るためには、道内自治体は研究施設などの名目や名称を問わず、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関わる一切の事前調査を受け入れてはならない。北海道平和運動フォーラムは、すべての自治体で高レベル放射性廃棄物の受け入れを拒否する条例の制定、または、議会決議や意見書の採択を求めていくとともに、北海道を核のゴミ捨て場にさせないとりくみに全力を挙げることを表明し、声明とする。
2021年8月12日
北海道平和運動フォーラム